『魔法少女ノ魔女裁判』を読了した。
最初に全体的な感想を言うと、非常に楽しめた。
特に良かったのは、キャラクターと物語が強く結びついているところだ。
物語が進んで登場人物への理解が深まるほど、それまでの言動や関係性の見え方が変わっていく。
一方で、純粋な推理ゲームとして見ると少し肩透かしに感じる部分もあった。
それでも、難解なトリックを解くことそのものより、キャラクターの感情や背景まで含めて物語を読む作品としてはかなり好みだった。
あまりに自分に刺さりすぎて、普遍的にどのくらい評価されるものなのか測りかねている。
ノベルゲームを読むこと自体が苦にならない人なら是非おすすめしたい。
この記事では、全編読了後の感想を書いている。
以降、物語の核心に触れるネタバレを含む。
ちなみに、このゲームは公式でも『まのさば』と呼ばれているようだ。
プレイする前にこの略称は少し耳に入っていたが、「魔法少女ノ魔女裁判」がその「まのさば」だと気がついたのはクリアしたあとだった。
読み物ゲームとしての魅力
近年は、多くの読み物系のゲームがソーシャルゲームとしてリリースされている。
もちろん善悪の問題ではないのだが、このゲームからはそういったソシャゲとはまた異なる種類の、かつて摂取していた栄養を取れた感じがする。
Steamストアページなどは、”かわいい女の子”と”残酷”が前に出ているように見えて、正直に言ってもったいないなと感じる。
この紹介の仕方はキャッチーではあるが、実際にプレイして感じる品質の高さからすると安っぽくすら思える。
本作の魅力は、残酷さよりも(後述する)キャラと物語の噛み合わせにあるのではないだろうか。
物語とキャラクターの立体感
『まのさば』はキャラゲーであるといえる。
読み物系のゲームであれば、多かれ少なかれキャラクターへの理解が面白さにつながる。
その中でも、このゲームは特にそこを大事にしているんだなと感じた。
特に面白かったのが、視点によってキャラクターの見え方が変わるところだった。
エマ(に取り憑いたユキ)から見た人物像と、ヒロから見た人物像が完全には一致しない。
同じ人物でも、どのような状況で誰と接しているかによって振る舞いが変わるし、それぞれが相手に見せていない部分もある。
物語が進むほど見え方が更新されていく。
この立体感が、本作のキャラクターの魅力につながっていると思う。
推理方法にもキャラクター性が出ている
裁判パートでも、登場人物それぞれの考え方や性格が推理にも反映されている。
誰が何を疑うのか。
どこを重要だと考えるのか。
何を言いたくないのか。
事件のトリックだけでなく、裁判中のやり取りから「なぜこの人物はこう考え、動いたのか」を追うのも面白い。
たとえば、エマの推理パートが正統派な理詰めなのに対して、ヒロが盤外戦術の搦め手中心になる。
偽証ギミックを追加するというゲーム的な都合と、ヒロのキャラクター性、そして物語上の役割がうまく噛み合っていて、よくできているなと思った。
推理ものとして見ると肩透かしを食らうかもしれない
魔法がある世界、しかも魔女化の進行でできることが増えるのである程度仕方ないところか。
システム自体はダンガンロンパのノンストップ議論を強く想起させるもので、おいしいところだけをうまくピックアップしたような形になっている。
ただ、証拠品の説明や選択肢はやや意地悪な書きかたをしている部分もある。
トリックの予想はわりとつきやすいのに、どの選択肢を選べばいいかわからない状態になりがちなのもダンガンロンパ譲りか。
まとめ
『魔法少女ノ魔女裁判』は、キャラクターと物語の噛み合わせが特に印象に残った作品だった。
推理ゲームとして見ると、成長する魔法の存在やゲームシステム上の都合もあり、純粋な謎解きを期待すると物足りないかもしれない。
一方で、その事件がなぜ起きたのか、登場人物が何を想って行動したのかという部分は丁寧に作られている。
自分としては、犯人やトリックを当てることよりも、キャラクターへの理解が深まることで事件の見え方まで変わっていくところが面白かった。
残酷な題材ではあるが、単純にショッキングな展開を楽しむ作品ではない。
キャラクター同士の関係や感情を追いながら物語を読むノベルゲームとして、非常に楽しめた。

